介護保険制度 第8期の改正について、当連絡会の制度部会が整理した解釈です。自治体や立場の違いで解釈が異なる場合があります。正しくは各自治体保険者窓口でご確認ください。

令和3年度改正 の注目ポイント10

1、感染症や災害への対応力強化

2の認知症への対応力向上に向けた取り組み3の看とりへの対応充実4の医療と介護の連携推進については、地域包括ケアシステムの推進にむけた取り組。住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供される取り組みを推進する内容

5、6は、自立支援・重度化防止の取り組みの推進。制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を用いて、科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進する。データベース連携による科学的介護の推進・リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組みの連携・強化をすすめる内容。

7、8は、介護人材の確保・介護現場の革新
これは喫緊・重要な課題。介護人材の確保や介護現場の革新として、処遇改善や職場環境などの改善に向けた取り組みの推進、業務の効率化に向けた取り組。

9、制度の安定性・持続可能の確保。必要なサービスは確保しつつ、適正化・重度化を図る内容。

その他として、10、高齢者虐待防止の推進

平成30年度の改正の際に

  • ①地域包括ケアシステムを推進すること。
  • ②自立支援・重度化防止に資する質の高いサービスの実現をすること。
  • ③多様な人材の確保と生産性の向上を図ること
  • ④介護サービス適正化重点化を通じた制度の安定性、持続可能性の確保をすること。

の4つの柱の見直しと、さらなる推進を図る、新型コロナウィルス感染症や大規模災害などの対策を強化し、必要なサービス提供体制を確保するための取り組みが必要。

前回の改正から台風19号の自然災害やコロナウィルス感染症、ケアマネジャーの仕事に大きな変化あり。

ポイント1 感染症や災害への対応強化

1,感染症対策の強化として感染症の発生、まん延防止を目的に運営基準の改定。

  • ①感染症の発生防止等を検討する委員会をおおむね6か月に1回以上開催。ICTやテレビ電話などを活用してもOK。
  • ②委員会の結果を従事者に周知する。
  • ③指針を作成する。
  • ④研修および訓練を定期的に(年1回以上)実施する。*訓練は全サービス

2,感染症や自然災害の発生時での事業継続や早期の再開に向けて取り組みが強化。

  • ①感染症の継続や早期再開のための業務継続計画(BCP)を作成し、必要な措置を講ずる。
  • ②継続計画は定期的に見直す。
  • ③業務継続計画は従事者に周知する。
  • ④業務継続計画を実現するための研修や訓練を実施。

 2021年の改正では感染症、災害発生に際しての業務継続・早期再開にむけた取り組みは全サービス共通としており、3年の経過措置。

 新型コロナウィルス感染症の業務継続計画(BCP)に盛り込むべき内容は、感染症発生時に「誰が、何をするのか」、どんな関係機関に、どのように連絡するのか。感染発生時のサービス対応についてシュミレーションし職員不足の際の応援依頼など(職員確保)感染発生時の業務の優先順位を決めておく。

3、通所介護等の利用者減を見込んだ基本報酬への対応について

 昨年6月に厚生労働省から発出した事務連絡「新型コロナウィルス感染症に係る介護サービスの人員基準の臨時的な取り扱いについて、」いわゆる12報で通所系のサービスの2区分上位の報酬区分を算定できる特例を設けた。
今改定では新型コロナウィルス感染症感染拡大でダメージを強くうけた通所系の給付減に対応するため、基本報酬のしくみで見直しがおこなわれた。具体的には「利用者減の月」を基準とした基本報酬の設定や、一定以上の利用者減が生じた場合の基本報酬の上乗せ。

4,新型コロナウィルス感染症に対応するための特例的な評価

 その他のサービスは経費増などへの対応から基本報酬に一律0.1%が上乗せ。2021年9月まで。
これ以外では、たとえば災害を想定した避難訓練を行う場合、地域住民の参加が得られるように「普段からの連携」に努めることが基準にもりこまれている。

介護サービス事業者に感染症の発生及びまん延等に関する取り組みの徹底を求める観点から、取り組みを義務づけ。

施設系サービスについてすでに策定。現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施に加え、訓練の実施の取り組みを義務化。

その他のサービス、訪問系サービス、通所系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援、居住系サービスは、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練の実施が義務づけ。

業務継続の取り組み強化として

新型コロナ感染症と災害の取り組みはそれぞれ。

感染症・災害発生に際しての業務継続・早期再開に向けた取り組みとして①業務継続に向けた計画等の策定、経過に沿った措置、従事者に対する計画の周知、計画の定期的な見直しとして必要に応じた変更、計画に沿った研修及び訓練の実施。

また、新型コロナウィルス感染症の業務継続計画(BCP)に盛り込むべき内容。染症発生時に「だれが、なにをするか」の(業務担当)、どんな関係機関にどのように連絡するかの(連絡フロー)、感染発生時のサービス対応についのて(シミュレーション)、職員不足の際の応援依頼などの(職員確保)、感染発生時の業務優先順位の整理をする。

また、業務継続計画は国が示す「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)ガイドライン」を参照。

ガイドラインは新型コロナウィルス感染症発生時のもの、自然災害発生時のもの、それぞれのガイドラインがあり。

国から義務づけされたBCP、策定までの壁は高くその意味を知らずに取り組みのは難しい。

そもそも、BCPとは何か?BCPとは、地震や台風などの自然災害によって、電気やガス、水道といったインフラや設備が損傷した際に早期に回復して事業を再開させるための対策をまとめた計画書やマニュアル。BCPは地域性や事業内容、利用者層、経営理念などを基本として、法人単位で作る必要があり。インターネットなどで簡単にコピペできるものでもない。1人ケアマネ事業所について、他の事業所と共に共同で策定することが認められている。1人だからといってBCPの策定が免除されない。

居宅介護支援事業所のBCPについては固有の対応として厚生労働省が留意点をあげている。

  • ①災害発生時で、事業が継続できる場合には、可能な範囲で、個別訪問等による早期の状態把握を通じ、居宅サービスの実施状況の把握をおこない、被災生活により状態の悪化が懸念される利用者に対して、必要な支援が提供されるよう、居宅サービス事業所、地域の関係機関との連絡調整等をおこなう。
  • ②避難先においてサービス提供が必要な場合も想定され、居宅サービス事業所、地域の関係機関と連携しながら、利用者の状況に応じて必要なサービスが提供されるように調整を行う。
  • ③災害発生時で事業が継続できない場合には、他の居宅介護支援事業所、居宅サービス事業所、地域の関係機関と事前に検討・調整し対応。

このほか、モニタリング時に被災した場合や安否確認できない利用者への対応、事業所の浸水被害など検討項目は無数にある。毎年の見直しのたびに検討項目を増やす考えかたが重要。

ポイント2 認知症への対応力向上に向けた取り組み

1,認知症専門ケア加算の拡大と認知症専門看護師の配置

 基礎研修受講の義務化でベースを整え、より専門性の高い人材配置や取り組みについて報酬上の高い評価を拡大。それが認知症ケア加算の見直し。居宅での認知症対応の機会がふえるなかで、訪問系のサービス(訪問介護)も算定可能。人材配置要件について、認知症ケアに関する専門性の高い看護師を加えた。日本看護協会が認定する教育課程での「認知症看護」の終了者な。人材配置要件となる実践リーダー研修や指導研修についてEラーニング等による受講環境が図られる。

2,認知症行動・心理症状緊急対応加算の拡大

 BPSDが悪化した場合などの緊急的な受け入れを評価した加算に「認知症行動・心理症緊急対応加算」。この算定対象に小規模多機能型も拡大。

3,無資格者への基礎研修義務付け

 施設系などの従事者には介護職員初任者研修などを受けていない無資格の人もいる。今回の基準改定では、そうした人にも認知症介護基礎研修の受講を義務づけ。(3年の経過措置あり)

認知症介護基礎研修の義務づけは、認知症の理解のもと、本人主体の介護を行い、認知症の人の尊厳の保証を実現していく観点から、介護にかかわる全てのものの、認知症対応力を向上のため、介護サービス事業者に、医療・福祉関係の資格を持たないものへ、認知症介護基礎研修をの受講を義務づけ。その際、3年の経過措置あり。

4,「緊急時の宿泊サービス」への対応拡充

 在宅でのBPSD悪化など「緊急時」にそなえるに内容としてグループホームや小規模多機能での緊急宿泊ニーズに対応し、受け入れ人数や日数の緩和おこない、やむを得ない事情があれば14日まで利用可能

5,認知症に関する取り組みの情報公開

 介護サービス情報公開制度において認知症に関する施設・事業所の取り組み状況の公開を求めること。また、施設・事業所における研修等の実施状況を記す欄も設けられた。認知症に関する研修(認知症介護基礎研修)の受講状況も対象とした。

ポイント3 看取りへの対応充実

1、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の取り組みの推進

 看取り期のガイドラインの順守 まず、本人(あるいは代弁者としての家族)の意思を尊重するために、ガイドラインに沿って取り組みをもとめる。

2、施設等における評価の充実

 より早期からの看取り対応を評価。その人らしい人生のありかたは看取り期か否かとは別に、介護現場で常に尊重。日常の介護の延長に看取りケアがある。

特別養護老人ホームや老人保健施設における看取りへの対応として

「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組み。看取りに関する協議の場の参加者として、生活相談員を明記すること。

3、看取り期での生活支援を評価

 「その人らしい人生」を全うするには、最後まで身の回りの生活の整えが重要。例えば、看取り期の生活を整える際、訪問診療・看護だけではなく、訪問介護や訪問入浴の役割も重要。看取り期は頻回の訪問介護が必要とされるとともに、柔軟な対応がもとめられることを踏まえ、看取り期には訪問介護を提供する場合に訪問介護にかかわる2時間ルールの運用を、2時間未満の間隔で訪問介護がおこなわれた際に所要時間を合算せずに所定単位を算定できる。

4、看取り期のケアマネジメントを評価

 看取り期における適切な居宅介護支援の提供や医療と介護の連携を推進する観点から、居宅サービス等利用に向けて介護支援専門員が利用者の退院時などにケアマネジメント業務をおこなったが、利用者の死亡によりサービス利用に至らなかった場合に、モニタリングやサービス担当者会議における検討など必要なケアマネジメント業務や給付管理のための縦鼻がおこなわれ、介護保険サービスが提供されたものと同時に取り扱うことことが適当と認められるケースについて、居宅介護支援の基本報酬の算定を可能。

看取り期のケア 「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みを推進。

プロセスに関するガイドラインとは、医師等の医療従事者から本人・家族等への適切な除法の提供と説明がなされた上で、介護従事者を含む多専門職からなる医療・ケアチームと十分な話し合いを行い、本人の意思決定を基本として進めること。心身の状態に応じて意思は変化しうるため繰り返しおこなう事。

加算算定は、改正前は死亡前30日で、改正後は死亡日まえ45日より各種「看取り系加算」の算定開始。

看取り期の身体介護では医師の医学的知見により「回復の見込みがない」と診断された場合により、2時間ルールがなくなり所要時間を合算せずに算定できる。また、居宅介護支援では入院中の看取り期の利用者に対して、退院後を見据えたサービス調整をてがけたにもかかわらず、本人が亡くなりサービス提供できなかった場合、一定の書類を整えた場合には報酬算定可能。

ポイント4 医療と介護の連携推進

1、居宅療養管理指導 利用者の社会生活面の課題にむけた連携

 患者の重症化防止の観点からかかりつけ医への新なビジョンが提示。それは「患者の社会生活面の課題にも目を向け、地域社会におけるさまざまな支援へとつなげる取り組み。このことを社会的処方という。今改定では、居宅療養管理指導の見直しに反映。医師、歯科医師は社会的処方に沿った指導・助言を行う。

 これにあわせて、ケアマネジャーへの情報提供(診療情報提供書等)の様式も変更。この様式では、「社会的処方」について記す欄、社会生活面の課題と地域社会において必要な支援も設けられた。4月より変更。

2、薬剤師・歯科衛生士・管理栄養士との連携強化

 薬剤師へはケアマネジャーからも求めがあった場合や薬剤師が必要と認める場合にはケアプラン作成時、サービス提供時に「必要な情報を提供する」。新型コロナ感染が拡大するなか、対面診療なども制限。薬剤師による服薬指導についてもオンラインによる実施が診療報酬上で可能。

 歯科衛生士が提供するケースでの記録等の様式も新たに設定。口腔衛生に関する欄が少ない点を改善した。

 管理栄養士の自立支援・重度化防止に関する報酬上の評価から看取り系加算の算定に至るまで、さまざまな場面で活動範囲の広がった職種が管理栄養士。「外部の職種との連携」を可能とする要件では、医療機関だけではなく、地域の栄養ケア・ステーションに所属する管理栄養士も対象。

3、退院・退所の連携強化と評価

 退院時のカンファレンスに必要に応じて福祉用具専門員や作業療法士も参加。また、老健の居宅ケアマネジャーとの連携について、「利用者の入所前後」というタイミングが評価の対象となった。

 地域に住む高齢者が、その地域で自分らしい生活を最期まで持続していくためには、介護や医療、住まい生活支援の提供が必要。こうしたシステムを実現するために、介護職や医療関係者をはじめとした他職種連携をする必要があり。

 住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスがきれめなく提供される取り組みを推進。

 利用者を中心とした多職種連携のしくみとして患者の重度化防止の観点から、かかりつけ医への新たなポジションが示された。患者の社会生活面の課題に目を向け地域社会におけるさまざまな支援へとつなげる取り組み。

 利用者の入院時から支援がスタート。

  • 退院・退所後の在宅生活において福祉用具貸与が見込まれるケースなどは福祉用具相談員の参加をもとめている。また、訪問看護については利用者のニーズに対応し在宅での療養環境を早期に整える観点から医師が必要とみとめる場合は退院当日の訪問看護のサービス提供を可能。

 在宅での生活を支えることとして

  • 居宅療養管理指導において、利用者社会生活の課題にも目を向け地域社会における様々な支援へつながるように留意し関連する情報をケアマネジャーなどに提供するように努めること。
  • 薬剤師・歯科衛生士・管理栄養士との連携強化について、社会的処方に留意して、医師や歯科医師に必要な情報を提供すること。
  • 訪問介護の通院等乗降介助は利用者負担軽減の観点から、目的地が複数ある場合であっても、居宅が始点または終点となる場合は、その間の病院から病院への移送や通所系サービスの事業所から病院等へ移送といった目的地間の移送にかかる乗降介助に関して同一の事業所が行うことを条件に算定可能。
  • 認知症GH,短期療養介護、など緊急時の宿泊ニーズに対応する観点から、緊急時の受け入れ日数を14日までOKとした。
  • ケアマネジャーの通院同行は医療機関で診察を受けるさいに同席し、医師等と情報連携をおこなうことが評価される。
    他職種連携により住み慣れた地域での暮らしを支えること。

ポイント5 データベース連携による科学的介護の推進

CHASEは「高齢者の状態やケアの内容等」に関するデータベースで、モデル事業を経て2021年4月から本格稼働。CHASEは「訪問・通所リハビリにおける質の評価」のデータベースで2018年から介護報酬に反映。

1、[chase][visit]を[LIFE]に改称

 介護関連データベースは2021年度から一体的に運営されることになりその総称が「LIFE」と。

2、「LIFE」を活用した計画や取り組みを推奨

 介護サービスを提供する「際に、LIFEを活用したうえでPDCAサイクルの推進、ケアの質の向上の取り組みを「推奨」する。機能訓練・リハビリや口腔・栄養、褥瘡管理・排泄支援など、自立支援・重度化防止に関する多くの加算にLIFEと連携することを要件とした新区分が誕生。

3、教卓介護支援は「LIFE」からのフィードバックを活用

 今回の改定で推奨しているLIFEを活用した計画作成などは、居宅介護支援には求めていない。ただ、LIFEからのフィールドバック情報を「ケアマネジメント」に活用するといった点は推奨する。

4、「科学的介護推進体制加算」の新設

 訪問系などを除くサービスでLIFEが収集しているデータについて、事業所・施設から関連情報を提供しフィードバックをうけ現場のケアに活用する取り組みを評価する加算が科学的介護推進体制加算。

 利用者ごとのADL値、栄養状態、口腔機能、認知症の状況その他の利用者の心身の状況等に係る基本的な情報をLIFEを用いて厚生労働省に提出していること。必要に応じて通所介護計画を見直すなど、サービスの提供に当たって情報を活用していることなどが算定要件。

2018年度より通所・訪問リハビリテーションデーター収集システムVISIT

 2020年度より高齢者の状態やケアの内容をモデル事業とし2021年度から本格稼働したCHASEを一体的な運用を開始し、科学的介護の理解の浸透を図る観点から、名称を「科学的介護情報スステム LIFE」とした。また、介護報酬改定において、科学的に効果が裏付けられた自立支援・重度化防止に資する質の高いサービス提供の推進を目的とし、LIFEを用いた厚生労働省へのデータ提出とフィードバックの活用によるPDCAサイクル・ケアの質の向上を図る取り組みを推進。

PDCAサイクルとは?
Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Act(改善)の4段階を繰り返して業務を継続的に改善する方法。

ポイント6 リハビリテーション・機能訓練、口腔、栄養の取り組み・強化 口腔、栄養の取り組みの連携・強化

①計画作成や多職種間会議でのリハビリ、口腔、栄養専門職の関与の明確化

②通所介護、通所リハビリの個別入浴計画

③通所介護等における口腔、栄養の取り組み評価

 人間の生活動作というものは、身体のあらゆる機能が互いに関係しあって成り立つもの。特定の機能の向上だけに力をいれても、全体としての自立支援・重度化防止の効果なし。リハビリや機能訓練、口腔・栄養改善などの取り組みを「一体的」にすすめる環境を整えることが必要。具体的には、リハビリや口腔、栄養に関するさまざまな専門職が、分野を超えて取り組みに参加することを加算要件などで明らかに。

 多職種カンファレンスなどもサービス担当者会議の前後での開催を可能とする範囲をひろげている。また、自立支援・重度化防止の先にある利用者の生活に焦点を定める。利用者の日常生活での行為や社会参加を実現することがその人らしい生活や尊厳の保持につながる。通所での入浴は清潔保持につながるが、利用者としては、本当は「家の風呂できがねなく入浴を楽しみたい」となれば、家での入浴をみすえた通所での入浴介助をおこなっていく必要がある。

 今改定では利用者の自立支援、重度化防止にむけ多くのサービスで口腔・栄養ケアへの評価が強化された。

 施設系サービスで、口腔ケアスキルの向上や栄養改善に関する取り組みについて、一部を基本報酬上の評価に組み込みんだ。

 通所介護や多機能型などでは、口腔と栄養に関するスクリーニングを一体的に評価する。

 通所系や居住系などの栄養改善に向けた取り組みについて多職種関与を強化している。

ポイント7 処遇改善や職場環境などの改善に向けた取り組みの推進

1、育児・介護の両立が可能となる環境整備

人材の定着を図るための取り組み。 

育児・介護休業法に定められた休業・短時間勤務制度を活用した場合の常勤の取り扱いを見直した。これにより、育児・介護休業など事業所・施設内で取得しやすい環境が整えられた。(週30時間以上の勤務で、「常勤」として取り扱うなどの算定基準の見直しも。

2、ハラスメント対策の強化

 パワハラ、セクハラ、カスタマーハラスメントなどハラスメント対策に関する省令の改定があり、事業所・施設に各種ハラスメント対策の方針を明確化するなどを義務づけ。

 2021年ハラスメント防止対策について①事業主が方針等明確化及びその周知啓発と②苦情を含む相談に応じ適切に対応するために必要な体制の整備が義務づけ。

 事業主が講じることが望ましい取り組みは、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備。被害者への配慮のための取り組みとしてメンタルヘルス不調への相談、1人で対応させないような配慮をする。被害防止のための、マニュアル作成や研修の実施を職種や業務の状況にあわせて行う取り組みなど介護現場におけるハラスメント対策マニュアル、研修のための手引き等を参考にした取り組みを行うことが望ましい。

 2019年に三菱総合研究所が発表した「介護現場によるハラスメント対策マニュアル」によると、介護老人施設では71%の介護職員がハラスメントをうけたことがあると回答。また、介護施設利用者だけではなく、利用者の家族からもハラスメントをうける場合もあり。定期巡回・随時対応介護看護では37%の職員がハラスメントをうけて仕事を辞めたいと思ったことがあると回答。居宅介護支援も35%。

 2025年まで必要な介護職員は約245万人必要なため処遇改善や環境の改善は喫緊な課題。

ポイント8 業務の効率化に向けた取り組み

1、利用者等への説明・同意について、電磁的な対応可能

 利用者へのケアプランや重要事項説明書の提示、あるいはさまざまな記録の保存・交付について電磁的記録でもOK。つまり、利用者への提示もタブレット等が使える。

2、署名・捺印の見直し

 利用者からの同意に関しても押印や書名の規定を見直し。電子署名でOKや一部様式から押印欄を削除している。

3、運営規程等の記載、提示の緩和

 運営規定の掲示について閲覧可能なファイル等で備え置く方法で可能。従業員についての記載では人数〇人以上といった記載で大丈夫。

ポイント9 評価の適正化・重点化

1、ケアプラン点検強化

 頻回の生活援助ケースに加え、サ高住に居住する利用者で区分支給限度基準額の利用割合が高いケースや訪問介護が利用サービスの大半をしめるものも、ケアプラン点検の対象。(10月から)なお、ケアプラン点検については地域ケア会議だけではなく、サービス担当者会議を活用するなどの見直しあり。

2、訪問看護のリハ提供の評価

 リハビリ職の訪問看護は引き下げとなり算定に際して、①実施内容を訪問看護報告書に添付する。②対象者に「通所リハビリのみでは屋内でのADL自立が困難」というケースを追加。さらに、介護予防訪問看護については1日に2回超の実施ケース一時間のサービスや利用が1年に及ぶ利用者についての減算が強化されることに。

ポイント10 虐待防止の推進

1、運営基準に「虐待防止」を明記

 運営基準で、虐待防止の「体制の整備」を義務づけた。同意に受持者へ研修を実施する等も措置を求めている。また、重要事項に説明書のなかの運営規定に「虐待のための措置に関する事項」を記すことがプラスされた。

 虐待防止にむけた具体的措置

  • ①虐待防止のための検討委員会を定期的に開催すること。(ICT等の活用でもOK)
  • ②委員会の内容を従事者に周知すること。
  • ③虐待防止のための指針を作成すること。
  • ④従事者に対する研修を実施すること。⑤これらを実施するための担当者の配置をおこなうこと。

 虐待防止に向けた研修は厚労省の高齢者虐待防止法にもとづく実態調査によれば、施設等従事者による虐待の主な要因として「教育・知識・介護技術による問題」が58%に上がっている。この点に着眼しつつ、厚労省では「虐待防止プログラム」を策定中。

 令和3年3月26日のQ&Aによると

 小規模な事業所では実質従業者が1名だけということがありえる。このような事業所でも虐待防止委員会の開催や研修を定期的にしなければならないのかという問いに

 虐待はあってはならないことであり、高齢者の尊厳を守るため、関係機関との連携を密にして、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会を定期的に実施しする。小規模事業所においては他者・他機関によるチェック機能が得られにくい環境にあることが考えられることから、積極的に外部機関等を活用。と返答。委員会を法人内の複数の事業所で合同開催にすることや、感染症対策など他の委員会と併せて開催することも提案している。研修についてはこうした方法に加え、複数の事業所が共同で外部講師をまねいて実施したり、自治体が主催する研修へ参加したりする方法もあるとしている。

ココが変わる!居宅介護支援の変更点

利用者の自立支援に向けたケアマネジメントの質の向上が問われている。居宅介護支援についての報酬・基準改定も多岐に。

1、担当件数の逓減緩和

 改定前の逓減制にかからないCM1人あたり「40件未満」。これが、一定の要件を満たした場合には「45件未満」に緩和された。その要件としては業務においてICTを活用。または、事務職員を配置している。

2、特定事業所の要件見直し

 小規模事業所などが算定しやすいように、要件を緩和した新区分 加算Aを設けた。

 加算Aの算定案件として

 ケアマネジャー配置常勤1名以上、非常勤1名以上 24時間の連絡体制の確保、ケマネジャーへの計画的な研修、実務研修の基礎技術に関する実習への協力、他法人事業所との共同研修会などの要件について連携でも可能と。

 2018年改正時に新設された、特定事業所加算4について、病院との連携や、みとりへの対応の状況を要件とするもので、医療と介護の連携を推進する観点から特定事業所加算から切り離し特定事業所医療介護連携加算と名称変更。

3、看取り期の特例

 入院中の看取りの利用者に対して退院後を見据えたサービス調整をてがけたが、本人がなくなりサービス提供に至らないと報酬は算定されなかった。今改定で給付管理票の作成など一定の書類をそろえた場合には亡くなったとしても報酬算定が可能と。

4、通院時情報連携加算の創設

 利用者の通院に同行し、主治医との情報連携を行った場合を評価した加算。月に1回に限り算定可能。

 大田区のQ&Aで、訪問診療に同席した場合について算定できるのか?の問に「利用者が医療機関において診療を受ける際に」とあるので訪問診療は算定できないとされている。

ココが変わる!居宅介護支援の変更点

5、委託連携加算の創設

 包括が居宅介護支援事業所にたいして介護予防支援を委託をする際、適切な情報提供を図った場合に算定。

 適切な情報連携を図った場合には「包括側」に算定される加算。委託費に関しては「居宅側」に支払いを求めること。

6、利用者への新たな責任説明

 ケアマネジメントの公正中立の確保を図る観点から、利用者への説明義務が定められた。事業所で、前6月に作成したケアプランに関する内容。①ケアプランにおける、訪問介護、通所介護、地域密着通所介護、福祉用具貸与の各サービスの利用割合。②各サービスについて、それぞれ同一事業者によって提供されたものの割合を示すもので、これについては運営基準。

 詳しくは、介護保険最新情報「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A 3月23日の問111,112に記載されており参照。

 また、特定事業所加算1、2,3及びAにおいて新たな要件とされた、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスについても、3月23日のQ&A問113、114に記載

7、頻回の生活援助プラン点検

 2018年度改定で、頻回の生活援助をケアプランに位置付けた場合に、そのプランの届け出や地域ケア会議でのプラン検証が義務づけられた。

 今、改定では

  • ①届け出プランが検証された場合、次の届け出はその一年後でもOK。
  • ②新たな届け出プラン対象として「区分支給限度基準額の利用割合が高いもの」かつ「訪問介護が利用サービスの大半を占めるもの」を追加。
  • ③検証に際して、地域ケア会議のほか、サービス担当者会議に行政職員やリハビリ専門職を派遣しておこなう方法も可能と。

8、居宅サービス計画書の一部改正

 前年度3月31日に「介護サービス計画書の様式及び課題分析標準項目の提示について」の一部改正についてとして厚生労働省から通知。ケアプランの標準様式と記載要領の一部見直し。特に大きな点は1表の「利用者及び家族の生活に対する意向」「利用者及び家族の生活にたいする意向を踏まえた課題分析の結果」という文言が追加された。

 「逓減制の緩和」によって区分がわかれた。逓減制の緩和要件として、

①業務においてICTを活用している。(チャット機能アプリのあるスマホ等を含む)か事務職員を配置している(非常勤でも可能)プラス毎月末までに給付管理票を提出すること。

ICT 情報通信機器を具体的に言うと、当該事業所内外や利用者の情報を共有できるチャット機能のアプリケーションを備えたスマートフォンや訪問記録を随時記載できる機能、音声入力も可能のソフトウェアをくみこんだタブレットなど。個人情報や安全管理に関するガイドラインを遵守。

また、大田区のQ&Aで事務員の配置についての問があり、当該事業所の配置でなくても同一法人内での配置でも認められるが、常勤換算で介護支援専門員ひとりあたり1月に24時間以上の勤務を必要とするとしている。

第8期のうちに整備することは、感染症対策の強化(3年の経過措置あり)、業務継続に向けた取り組みの強化(これも3年の経過措置あり)、認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進(これも3年の経過措置あり)、高齢者虐待の推進(これも3年の経過措置あり)、ハラスメント対策の強化、科学的介護の取り組みの推進。